著者
諏訪 元
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
Anthropological science : journal of the Anthropological Society of Nippon (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.479-488, 1994-12-01
参考文献数
61
被引用文献数
1

初期人類の化石記録は南アフリカでの1930年以降の大量発掘, 東アフリカでの1970年代の発見ラツシュを経, 今日では1500点を越す標本群からなる. これらの化石標本はアファール猿人, アフリカヌス猿人, 初期ホモ属, およびロブスト型猿人 (エチオピクス猿人, ロブストス猿人, ホイセイ猿人) に分類される. 本小論ではこれらの初期人類の系統関係をめぐる現理解と問題点をまとめ, アファール猿人の実体, アフリカヌス猿人の系統的位置, ロブスト型猿人の進化様式とホモ属の出現について論じる.
著者
史 常徳 西澤 哲 足立 和隆 遠藤 萬里
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science : journal of the Anthropological Society of Nippon (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.467-484, 1995-12-01
参考文献数
16
被引用文献数
1 4

直立二足姿勢をとるヒトの脊柱は, 他の動物とは異なった形態を持つことが考えられる。本研究はヒトの脊椎骨の形態と姿勢との機能的な関係を明らかにする前段階として, 椎体の形態的特徴を抽出することを目的として行った。資料はヒト, チンパンジー, ニホンザル, ニホンカモシカである。計測項目は椎体に関する腹背側垂直径, 頭尾側矢状径, 頭尾側横径の6項目である。この結果ヒトにおける椎体の形態的特徴が他の哺乳類と異なる点は, 1) L4とL5の背側垂直径が腹側垂直径より著しく小さい, 2) 椎体横径がC3~C7, T8~最終腰椎まで著しく増加する, 3) 頸椎と腰椎椎体のプロポーションが太く短いということであった。これらの特徴とヒトの直立二足姿勢との関係についての考察を行った。
著者
尾本 恵市
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science : journal of the Anthropological Society of Nippon (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.415-427, 1995-12-01
参考文献数
46
被引用文献数
1

この総説は, 日本人の起源の問題について, 分子人類学の立場から, 何が, どこまでいえるのかを紹介し, 今後の総合的な日本人研究への一助とする目的で書かれた。検討のための土台として, 埴原の「二重構造モデル」が用いられた。このモデルを, (1)「原日本人」は東南アジア起源である, (2) 現代日本人の諸集団の形成には、「原日本人」と北東アジア系の渡来人という主として2つの系統を異にする集団が関わっている, との2つの部分仮説にわけ, それぞれを個別に検討した。分子人類学的に重要な資料としては, 古人骨のミトコンドリアDNAの塩基配列 (宝来ら) と古典的遺伝標識の遺伝子頻度を用いた多変量解析 (根井, および筆者ら) などがある。前者は, 原日本人の南方起源説にとり有利な資料を, また, 後者は, 反対に, 原日本人の北方起源説を支持する資料を提供している。また, 埴原のいう「二重構造」の存在についても, 意見がわかれている。このような不一致点をどのように説明するかが, 大きな問題である。本論文で筆者は, 問題点の所在を明らかにすると共に, 将来の検討に対する資料として, いくつかの提案をした。
著者
ADACHI Noboru SAWADA Junmei YONEDA Minoru KOBAYASHI Koichi ITOH Shigeru
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science : journal of the Anthropological Society of Nippon (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.121, no.2, pp.137-143, 2013-08-01
参考文献数
37
被引用文献数
20

Obtaining genetic information about early humans is indispensable to our understanding of the demographic history of mankind. In the present study, we performed a detailed mitochondrial DNA (mtDNA) analysis of a skeleton of the initial Jomon era unearthed from the Yugura cave site in Nagano, Japan, which was dated to 7920–7795 calBP by direct <sup>14</sup>C dating. mtDNA of the Yugura skeleton was designated to haplogroup D4b2, which is widely observed in present-day East Asians, including the Japanese, but is absent in Hokkaido Jomon people. This finding indicates that the basal population of Japan was heterogeneous with respect to their mtDNA lineage. This is the first report on the genotype of the people from the initial phase of the Jomon period.